Chapter 2 定点観測まとめ
町田市議会は、2018年3月定例会から2021年12月定例会までの4年間に769の議案を議決しました。この769の議案に対する表決行動に基づいて、市議会議員相互の類似性と相違性を、マッピングによって可視化します。また、町田市議会が4つのクラスタで構成されていることを示します。
マッピングに用いる座標軸と座標は、多重対応分析により決定します。また、座標軸の決定に寄与が大きい議案を抽出し、会議録に記された討論から、座標軸が持つ意味を解釈します。
2.1 3つの座標軸で捉える
多重対応分析を用いて、各議員を3D空間にマッピングした結果を図に示します。各議員の表決行動は、プロットの座標に反映されます。表決行動が似ている議員は、互いに近い位置にプロットされ、表決行動が異なる議員ほど、互いに遠い位置にプロットされます。例えば、濃い緑色と水色のプロット群は表決行動が似ているため、互いに近い位置にプロットされます。一方、赤色のプロット群、濃い青色のプロット群、そして明るい緑色のプロット群は表決行動が異なるため、互いに遠い位置にプロットされます。
マウスを使って、カーソルをプロットに近づけてみてください。議員名と座標が表示されます。また、図はマウスを使って回転、ホイールを使って拡大・縮小できます。さまざまな角度から、眺めてみましょう。
この3次元の空間には、議員の表決行動の違いが圧縮されています。軸Dim.1は表決行動の56%を、軸Dim.2は11.2%を、軸Dim.3は7.8%を表現しており、この空間全体で表決行動の75%を表現しています。
表決行動を「賛成」「反対」「その他」の3つに区分しました。「その他」は欠席および退席を含みます。また、議長を務めた若林彰喜並びに熊沢あやり、辞職した松岡みゆき、星だいすけ並びに吉田つとむ、および欠席で25以上の表決に参加できなかったおさむら敏明並びに佐藤かつひろについては、外れ値として扱いました。
水色のプロット群は、濃い緑色のプロット群の極めて近い位置にいます。拡大しても僅かな違いしか認められません。濃い緑色のプロット群は自民党会派の議員を表し、水色のプロット群は、公明党会派の議員を表します。2つの会派の表決行動は極めて似ていることがわかります。
赤色のプロット群は、濃い緑色と水色のプロット群から最も遠く離れた位置にいます。特に、他のプロット群と違って、座標軸Dim.1の方向に離れています。このことから、座標軸Dim.1が赤色のプロット群の表決行動の特徴を強く反映した座標軸であると言えます。赤色のプロット群(4人のうち3人のデータラベルが重なっています)は、共産党会派の議員を表します。
濃い青色のプロット群は、濃い緑色と水色のプロット群から座標軸Dim.2の方向に離れた位置にいます。座標軸Dim.2が濃い青色のプロット群の表決行動の特徴を反映した座標軸であると言えます。濃い青色のプロット群は、まちだ市民クラブ会派の議員を表します。
明るい緑色のプロット群は、座標軸Dim.1と座標軸Dim.2とで形成される平面から、座標軸Dim.3方向に離れた位置にいます。座標軸Dim.3が明るい緑色のプロット群の表決行動の特徴を反映した座標軸であると言えます。明るい緑色のプロット群は、保守の会および諸派の議員を表しています。諸派と保守の会は一つの会派ではありませんが、おなじ傾向を備えていることがわかります。
このように、およそ4つのクラスタが、町田市議会を構成していることがわかります。
2.2 2つの座標軸で捉える
3D空間に可視化された議員の類似性と相違性を踏まえ、次は2次元の平面を切り出して、詳細に検討してみましょう。
2.2.1 座標軸Dim.1と座標軸Dim.2で捉えた議員の類似性と相違性
まず、座標軸Dim.1と座標軸Dim.2で表される平面を切り出して図に示します。暖色系の色でプロットされた議員は、この平面に比較的近い位置にいます。一方、寒色系の色でプロットされた議員は、この平面から離れた位置(例えば、座標軸Dim.3方向に離れた位置)にいます。つまり、寒色系の色でプロットされる議員は、座標軸Dim.1と座標軸Dim.2だけでは表現し難い相違性を他の議員との間に備えていることを意味します。
座標軸Dim.1に着目すると、共産党会派だけが右側の+1.0から+1.2の範囲にプロットされ、他の会派はすべて左側の-0.4から±0.0の範囲にプロットされます。これは、自民党会派・公明党会派と、共産党会派の間を埋める議員が居ないことを意味します。
座標軸Dim.2に着目すると、まちだ市民クラブは下側の−0.4から−0.3の範囲にプロットされ、自民党会派、公明党会派、保守の会および共産党会派は、上側の±0.0から+0.2の範囲にプロットされます。そして、自民党会派・公明党会派と、まちだ市民クラブの間に、諸派と保守の会が位置します。なお、諸派と保守の会のプロットは寒色系の色でプロットされており、座標軸Dim.1と座標軸Dim.2で表される平面から座標軸Dim.3の方向に離れている点に注意が必要です。諸派と保守の会は、自民党会派・公明党会派と、まちだ市民クラブの間を埋めながら、そこに別の相違性を備えていることを意味します。
なお、座標軸Dim.1および座標軸Dim.2のそれぞれが持つ意味ついては、次のセクションで触れることにします。
2.2.2 座標軸Dim.1と座標軸Dim.3で捉えた議員の類似性と相違性
次に、座標軸Dim.1と座標軸Dim.3で表される平面を切り出します。先程と同様に、暖色系の色でプロットされた議員は、この平面に比較的近い位置にいます。また、寒色系の色でプロットされた議員は、この表面から離れた位置(例えば、座標軸Dim.2方向に離れた位置)にいます。つまり、寒色系の色でプロットされる議員は、座標軸Dim.1と座標軸Dim.3だけでは表現し難い相違性を他の議員との間に備えていることを意味します。
座標軸Dim.3に着目すると、保守の会および諸派が+0.2から+0.5の範囲に広く分布する一方、自民党会派、公明党会派、まちだ市民クラブおよび共産党会派は、-0.1から±0.0の範囲にプロットされています。また、保守の会は諸派より座標軸Dim3の値が大きい傾向が認められ、諸派は保守の会より座標軸Dim.1と座標軸Dim.3で表される平面から座標軸Dim.2の方向に離れている傾向が認められます。
2.2.3 座標軸Dim.2と座標軸Dim.3で捉えた議員の類似性と相違性
次に、座標軸Dim.2と座標軸Dim.3で表される平面を切り出します。先程と同様に、暖色系の色でプロットされた議員は、この平面に比較的近い位置にいます。また、寒色系の色でプロットされた議員は、この表面から離れた位置(例えば、座標軸Dim.1方向に離れた位置)にいます。つまり、寒色系の色でプロットされる議員は、座標軸Dim.2と座標軸Dim.3だけでは表現し難い相違性を他の議員との間に備えていることを意味します。
座標軸Dim.3に着目すると、保守の会および諸派が+0.2から+0.5の範囲に広く分布する一方、自民党会派、公明党会派、まちだ市民クラブおよび共産党会派は、-0.1から±0.0の範囲にプロットされています。また、保守の会は諸派より座標軸Dim3の値が大きい傾向が認められ、諸派は保守の会より座標軸Dim.2の値が小さい傾向が認められます。
2.3 それぞれの座標軸が持つ意味
座標軸は多重対応分析が数学的に作り出したものであり、事前になんらかの意味づけがされたものではありません。解釈により事後的に意味づけする必要があります。
座標軸は、その座標軸の決定に寄与した表決によって意味づけられます。そこで、それぞれの表決の座標軸に対する寄与の大きさを算出し、寄与が大きい表決を抽出します。また、その議案の審議で行われた討論を町田市議会の会議録から別途抽出します。そして、寄与が大きい表決を介して、座標軸と討論を紐づけます。こうすることで、討論の論点を、座標軸が持つ意味の解釈に使うことができます。
座標軸の決定に寄与が大きい議案の表決を表にして以下に示します。それぞれの座標軸について、その座標軸の決定に寄与が大きいものから順番に並んでいます。左から議案番号、議案名および表決が並んでいます。Dim.1、Dim.2およびDim.3の値は、その座標軸の決定に対する寄与の大きさを表しています。そして、その議案の審議で討論があった場合、その討論を行った議員名を関連討論の列に記し、会議録の該当する討論にハイパーリンクを貼りました。リンクを辿って会議録を確認すれば、討論とその論点を知ることができます。
なお、座標軸の決定に寄与が大きい議案の表決は市議会の最終的な議決と一致するわけではありません。少数の集団の特徴的な表決行動が軸を特徴づける場合があります。市議会の最終的な議決は市議会のホームページでご確認ください。
2.3.1 座標軸Dim.1が持つ意味
座標軸Dim1.の決定についての寄与が大きい表決を、寄与が大きい順番に表にして示します。なお、便宜上、座標軸Dim1.の決定についての寄与の値が0.1より大きく、他の座標軸の決定についての寄与の値と比較して、2倍を超える表決を、寄与が大きい表決とします。
他の座標軸と比較して、市長提出議案に対する表決が高い割合を占めています。座標軸Dim.1は、市長提出議案の一面を評価する軸になっているようです。